武蔵嵐山の散策(049)-10km

槻川の清流・岩畳・周囲の樹々、ときには新緑/ときには紅葉が美しい武蔵嵐山渓谷。
こんなコースです。
渓谷と周辺の景色が京都の「嵐山」によく似ているという「武蔵嵐山」。この美しい景観を眺め、また、中世の史跡を訪ねる10キロメートルのウォーキングです。新緑、ソメイヨシノ、ヤマザクラ、ヤマツツジ、ラベンダー、10月サクラ、紅葉、……が楽しめます。「ハーフコース」「オプションコース」も用意しました。
☆ ☆ ☆
武蔵嵐山は低い山にすっぽりと囲まれ、空が広くて心地良い町だった。歩き始めてすぐに、とあるお宅のまえで、冬支度に入る植木屋さんに呼び止められた。
「この町は京都の嵐山に似てるから武蔵嵐山って名前がついてるが、風呂敷を広げて端から包んでヒョイとかついで持ってかえれるような、小さな絶景なんだよ」。なんて粋な話をする植木屋さんなんだろう。
「昭和のはじめ、京都に似てるってことが評判になり、3両編成の満員列車が駅に着くとお客がみんな降りて、駅から渓谷まで大勢の行列ができたもんだ」。
もっと話したらどんな言葉が飛び出してくるか聞いていたい気分。後ろ髪ひかれる気分で先を急ぐ。
太平山の入口で、同行者と別々の道で標高179メートルの大平山を目指すことになった。ヒノキやヤマザクラが林立した林の中、一人歩けるぐらいの狭い登り坂を、ゆっくり一歩ずつ足を進ませる。誰とも行き逢わず、聞こえるのは自分の足音と息づかいと鳥のさえずり。汗ばんだ顔に冷たい風が心地いい。ふと《私はどこに行こうとしてるんだろう、人生の終着点が見え始めた今、私は何を残そうとしてるんだろう》と一瞬ではあったが、ふいにそんなことが頭をよぎる。
やっと辿り着いた山頂は10人ぐらいの団体が四阿を占領して、バーベキューやら鍋を作っていた。昔、自分たちもあんな風に楽しんだことがあったなあ、と賑やかな声を背に、妙に落ち着いた気分で町を見下ろした。眼下には長閑な嵐山町の田園風景が広がり、遠くに霞んだ高層ビルが見える。
配水場まで巻き道をたどり、そこから山頂まで登る[オプションコース]を通ってきた同行者と合流。巻き道は、今年の大雨や台風のときに落ちてきた枝で塞がれていたところもあったそうだ。しかし、配水場の先から登ってくる道は、両側にヤマザクラやヤマツツジの樹が植えられて、春には花のトンネルができそうだと言う。
大平山から、「嵐山町名発祥の地」碑のある展望台まで登山道をくだる。このあたりは、イロハモミジが葉を大きく広げていて、紅葉のときは見事な彩りを見せてくれるだろう。与謝野晶子の歌碑を通り、ススキの海を泳ぐが如く通り抜け、周辺を散策しながら槻川におりて冠水橋をわたる。清流槻川と岩畳、周囲に生い茂る木々、渓谷のバーベキュー場でしばし休憩。バーベキュー場の脇にある槻川橋に寄ってみる。この槻川橋から眺めた景観が京都嵐山に似ているので、「武蔵嵐山」と名づけられたそうだ。渓流の両側をふさふさの葉がおおいかぶさるように、奥行き感をもって張り出し、たしかに朝、植木屋さんが言っていた、風呂敷につつんで持って帰れるような絶景だ。
とつぜん、ハーブにも見える草が整然と植えられた畑があらわれた。遠くにある看板を目を凝らして見たら、「ラベンダー」の文字が見える。10ヘクタールあるラベンダー畑をまわりこみ、都幾川の堤をあゆむ。都幾川には、2キロメートルにわたって250本のソメイヨシノの桜堤がつづいていて、例年3月下旬から4月上旬に「嵐山さくらまつり」が開かれ、菜の花も咲き、花火大会も行われるそうだ。都幾川と槻川との合流点にある二瀬橋からは広々と景色を見渡すことができ、登ってきた大平山とそれに連なる山々は、これが日本の原風景だと思わせる、のどかで美しい里山の姿だ。 ホタルの里、程よく整備された雑木林を通り抜けると、鎌倉時代、畠山重忠の館と伝えられる「菅屋の館」の跡にタイムスリップする。晩秋の夕日に、散歩する人、ランニングする人、ポケモンgoに興ずる人の影が長く伸びていた。
冬支度に入った木々がこの時期だけ見せる、赤と緑の紅葉のグラデーションが美しい武蔵嵐山を堪能した最高の良い1日でした。
(2018年11月初めに歩いた記録です;by MK)
コース概要
東武東上線・武蔵嵐山駅―菅谷公園―嵐山渓谷入り口信号―大平山山頂・東屋―展望台・嵐山地名発祥の地―与謝野晶子碑―さいたま緑のトラスト保全第3号地遊歩道―冠水橋―嵐山渓谷バーベキュー場―槻川 (つきがわ) 橋―千年の苑ラベンダー園―桜並木の土手―菅谷館跡―埼玉県立嵐山史跡の博物館―東武東上線・武蔵嵐山駅
コースの写真
コースの写真はコチラをクリック ⇒ 「049-武蔵嵐山の散策」
コース地図をご覧ください。
コース距離です。*カッコの数字は、コース地図上の番号
ポイント | 区間距離 | 累計距離 |
(01) 武蔵嵐山駅 | ― | ― |
(02) 菅谷公園 | 798m | 798m |
(03) 信号「嵐山渓谷入口」 | 526m | 1,324m |
(04) 道しるべ | 601m | 1,925m |
(05) 大平山入口 | 357m | 2,282m |
(08) 東屋 | 563m | 2,845m |
(10) 展望台 | 360m | 3,205m |
(14) 緑のトラスト保全台3号地散策路(往復) | 300m | 3,505m |
(13) 槻川の渓流(往復) | 1,090m | 4,595m |
(16) 展望台から塩沢冠水橋 | 379m | 4,974m |
(17) 嵐山渓谷バーベキュー場 | 1,240m | 6,214m |
(18) 嵐山渓谷バーベキュー場から槻川橋(往復) | 319m | 6,533m |
(20) 千騎沢橋 | 699m | 7,232m |
(21) 二瀬橋 | 706m | 7,938m |
(24) (25) 菅谷館跡・埼玉県立嵐山史跡の博物館 | 647m | 8,585m |
(26) 稲荷塚古墳 | 498m | 9,083m |
(01) 武蔵嵐山駅 | 876m | 9,959m |
*コース地図でピンク色の線のコースです。
コースの説明
(11) 武蔵嵐山
一般社団法人嵐山町観光協会が運営するポータルサイト《嵐山町旅の達人》の「嵐山渓谷」によれば、「嵐山渓谷はその地形的な特徴から、秩父の長瀞岩畳に例えて“新長瀞”と呼ばれていたこともあるようですが、昭和3年(1928)秋、日本で初めての林学博士・本多静六博士が当地を訪れ、渓谷の最下流部にある槻川橋より渓谷と周辺の紅葉や赤松林の美しい景観を眺め、京都の嵐山の風景によく似ているとのことで、“武蔵国の嵐山 (むさしのくにのあらしやま)”と命名されたということです。それが大変評判になり、多数の観光客が訪れます」。与謝野晶子もここを訪れて「比企の渓」を歌い、歌碑が建っています。
この《嵐山町旅の達人》には、わかりやすい地図「紅葉みどころスポット嵐山渓谷」も載っていて、便利です。
なお《嵐山町ホームページ》の検索窓に「嵐山渓谷」などのキーワードを入れて検索すると、周辺の話題がいろいろ載っています。
(14) さいたま緑のトラスト
埼玉県民が主体となって基金を積み立て、その資金で県内の優れた自然や貴重な歴史的環境を取得し、県民の共有財産として保全していこうというものです。「武蔵嵐山渓谷周辺樹林地」は、平成10年に埼玉県と嵐山町が、緑のトラスト保全第3号地として取得しました。面積は、大平山を中心とする13万5,038平方メートル。
(19) 千年の苑ラベンダー園
2019年6月に、約5万本のラベンダーが咲き誇るラベンダー園が誕生します。2019年オープン時のラベンダー園は約8ヘクタールとなり、植え付け面積では日本最大級の広さとなります。期待できますね。
下記は、「埼玉県嵐山町 2019/03/11 に公開」の映像です。
(24) (25) 菅谷館跡(国指定史跡)
畠山重忠は、頼朝の鎌倉入り以降は源氏に従い、義仲追討や平家追討の戦い、奥州の藤原攻めにも参加するなど活躍した、鎌倉時代初期の御家人で、その館「菅屋の館」があったと伝えられています。しかし、発掘調査でも当時の痕跡は見つかっていません。
現在、菅谷館跡に見られるものは、戦国時代につくられた城郭跡です。都幾川の断崖の上に築かれた総面積約13万平方メートルの広大な平城でした。二瀬橋から入っていくと、ホタルの里をすぎ、断崖をのぼると二ノ郭、本郭があった草原がひろがり、さらに三ノ郭、西ノ郭がありますが、それらの郭を囲み防護する空堀が残っています。詳しくは、埼玉県立嵐山史跡の博物館トップページ > 博物館紹介 > 菅谷館跡 > 畠山重忠と菅谷館跡 をご覧ください。
敷地の北東には、埼玉県立嵐山史跡の博物館(入場料・大人100円)があります。例年11月はじめに「嵐山まつり」が開かれ、時代まつりも行われています。
ハーフコース、オプションコース
ハーフコース
*大平山(標高差約90メートル)に登らないコース:(05) 大平山入口⇒(15) 分岐⇒(10) 展望台
*バスを利用するコース:(17) 嵐山渓谷バーベキュー場(バス停「休養地入口」)からバスで (01) 武蔵嵐山駅へ戻ります。時刻表は、「休養地入口 – イーグルバス」(2017年3月25日改正) にあります。
オプションコース
*(05) 大平山入口⇒(06) 嵐山町上水道配水場(882m)、(06) 嵐山町上水道配水場⇒(07) 遠山トンネルの碑を経て、(09) 大平山山頂 179m、(08) 東屋(907m)に至るコース。大平山入口から配水場までは細い山道で、整備はされていますが、あまり人が歩いていないようです。遠山トンネルの碑前で一般道にでますが、すぐ、太平山山頂への登山道に入ります。この道は土の道ですが広く、道の両側にはヤマザクラ、ヤマツツジが植えられています。
ちょっと寄り道
嵐山町観光協会が、(01) 武蔵嵐山駅構内および (17) 嵐山渓谷バーベキュー場に売店を出していて、赤飯、山菜おこわ、おやき、おにぎり、まんじゅう等を販売しています。嵐山渓谷バーベキュー場ではバーベキューの食材も販売しています。詳しくは、コチラ をご覧ください。
嵐山駅前にはコンビニがありません。(03) 信号「嵐山渓谷入口」にあるファミリーマートが、このコース途上にある唯一のコンビニです。