奥多摩駅に来たら、なんといっても、居酒屋「むら㐂 (むらき)」で疲れをいやす。

まだ6月末なのに、梅雨明け宣言。
三十数度の気温の下、JR青梅線・古里駅から約9キロメートルのハイキングで奥多摩駅に着いたのは、平日の午後2時を少しまわった時間。

先に駅に着いた同行者たちが、「居酒屋・むら㐂 (むらき)の前の路地を通ったが、開店していなかった」と言う。
徒歩十数分のところに温泉があるが、気がすすまない。

登っているとすぐに足が攣るようになり、登山から遠ざかって4年ぐらいになる。むら㐂 にも、ご無沙汰だ。でもママさんは、
「奥多摩に来たら、いつでも電話してね。まだやってなくても、すぐ、お店を開けるわよ」
と言ってくれていた。

早く冷たいものを喉に流し、くつろぎたい。

むら㐂 は、間口が2間あるかないかの狭いお店だ。ガラスの引き戸に手をかけてみるが、固くカギがかかっていて、戸はうごかない。でも、お店のなかに人の気配がする。
ガラスを、トントントン、と軽く叩いてみる。
反応がない。
もういちど、トントントン。
「ちょっと待ってってね」
ママさんの声だ。
戸が開くと、ママさんは大きな目をもっと大きくして、「おひさしぶり~」。なつかしい。家に帰ってきた気持ちだ。

むら㐂 に通い始めて何年になるのか、覚えていない。開業して間もないころから、通い始めたことは確かだ。開業したころ奥多摩駅のすぐまわりには、昔からの土産物屋兼食堂が数軒あったが、居酒屋には気づかなかった。山から下りてきたあるとき、飲むところを探検しようと思って駅のそばを歩いたら、むら㐂 があった。

ママさんは地元の方で、常連も地元の方たちだ。飲みすぎると奥多摩で泊まらなければならなくなるのでホドホドの時間に切り上げているが、仲良くなった常連さんもいる。春、山に入って採ってきた山菜をママさんに料理してもらい、その場にいるお客さんたちにふるまってくれる人もいる。猟師もいて、狩りのこと、流通のことなどを教えてくれた。奥に10畳ぐらいの座敷があって、お客さんが大勢のときは使うが、路地に面したカウンター席がいい。カウンターは、6人座るといっぱいだ。だから、初めて出会ったお客さんどうしも、話がはずむ。

ここに来たら、大和芋だけがつなぎのお好み焼、ヤマメの燻製、山菜の天ぷら、は外せない。

 

 

ママさんは12年前に倒れて、片手・片足が不自由になってしまった。倒れたとき半年ぐらいは休業したが、いまは、そのことを知らないと気がつかないだろう。

3時をすぎたごろ、お客さんが一人入ってきた。我々は5人いて、お店は満席になった。その常連さんは、もう引退していて、家庭菜園ぐらいしかしてないそうだが、きょうはあんまり暑くて草とりを早く切り上げたそうだ。おもしろい方で、話が盛り上がり、このままでは夜中になってしまうことを恐れ、4時すぎにお暇して帰路についた。

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